そこで、
「アルケミスト 夢を旅した少年」
パウロ・コエーリョ
山川紘矢+山川亜紀子=訳
という本に出逢いました。

200頁弱の薄い文庫本です。
「アルケミスト」とは、日本語では「錬金術師」という意味です。
錬金術とは、
一般的に「鉛を金に変える奥義」として伝わっていますが、
本来的な意味は、
(鉛のような)私たちの物質的肉体・魂を
(黄金のように)光り輝かせ、霊的な成長を遂げるための奥義
です。
この本は、もともと羊飼いだった「少年」が、
夢をきっかけに、内なる声に耳を傾け、
砂漠を旅するお話です。
鉛のような心を持った少年(普通の羊飼いの少年)が、
心を強くし、黄金(アルケミスト)に変容していく
とてもかわいらしくて読みやすい本です^^
この本のなかに『エメラルド・タブレット』の本のことが少し出てきます。
その部分のみを抜粋してみたいと思います。
それはとても奇怪な本ばかりだった。
水銀や塩や龍や王様のことが書いてあって、
少年には少しも理解できなかった。
しかし、すべての本を通してくり返されている一つの考えがあった。
それは、
すべてのものはただ一つのものがさまざまに現れたものにすぎない
ということだった。
ある本の中で少年は、
錬金術の最も重要な文献はほんの数行から成るもので、
それはエメラルドの表面に書かれているということを知った。
「それはエメラルド・タブレットのことだよ」
とイギリス人は言った。
少年に何かを教えることができて、彼は得意だった。
「ではなぜ、こんなにたくさんの本が必要なのですか?」
と少年がたずねた。
「その二、三行を理解するためだよ」
とイギリス人は言ったが、
彼は自分の言っていることを本当には信じていないように見えた。
(中略)
「学ぶ方法は一つしかない」
と錬金術師は答えた。
「それは行動を通してだ。
おまえは必要なことはすべて、お前の旅を通して学んでしまった。
おまえはあと一つだけ、学べばいいのだ。」
少年はそれが何なのか、知りたかった。
しかし錬金術師ははやぶさを探して、地平線の彼方を見ていた。
「あなたはなぜ、錬金術師と呼ばれているのですか?」
「錬金術師だからさ」
「では、他の錬金術師が金を作ろうとしても作れなかったのは、
何がまちがっていたのですか?」
「彼らはただ金だけを探しているのだ」
と錬金術師は答えた。
「彼らは自分たちの運命の宝物だけを求めていて、
実際に運命を生きたいとは思っていないのだ」
「僕が知らなければならないことは、何ですか?」
と少年がたずねた。
しかし、錬金術師は地平線を見つめ続けていた。
そしてついに、はやぶさが食事を持ち帰ってきた。
炎の光が見えないように、二人は穴を掘ってその中に火をおこした。
「わしはただ錬金術師だから、錬金術師なのだ」
と彼は食事を用意しながら言った。
「わしは錬金術師をわしのおじいさんから学んだ。
彼はそれをその父親から学び、
そしてどんどんさかのぼっていくと、
この世界ができた時まで行きつくのだ。
その頃、この『大いなる作業』は、
エメラルドの上に簡単に書かれていた。
しかし、人間は簡単なものを拒否し始め、
論文や解説書や哲学的研究を書き始めていた。
彼らはまた、自分たちは他の人よりももっと良い方法を知っていると思い始めた。
しかし、エメラルド・タブレットは、今も生きている」
「エメラルド・タブレットには何が書かれているのですか?」少年は知りたがった。
錬金術は砂に図を描き始め、五分以内に書き終わった。
「これがエメラルド・タブレットに書かれていることだ」
書き終わった時、錬金術師が言った。
少年は砂の上に描かれているものを読もうとした。
「これは暗号ですね」少年は少しがっかりして言った。
「僕がイギリス人の本の中で見たものと同じように見えます」
「いいや、違う」と錬金術師は答えた。
「これはあの二羽のタカが飛んでいるのと、同じようなものだ。
これは理屈だけではわからないものなのだ。
エメラルド・タブレットは、大いなる魂への直接の通路なのだ。
賢人は、この自然の世界は単なる幻で、天国の写しにすぎないと言っている。
この世が存在しているということは、
ただ単に、完全なる世界が存在するという証拠にすぎないのだ。
目に見えるものを通して、
人間が霊的な教えと神の知恵のすばらしさを理解するために、
神はこの世界を創られたのだ。
それが、行動を通して学ぶとわしが言ったことなのだよ。」
「僕はエメラルド・タブレットを理解すべきですか?」と少年はたずねた。
「もしおまえが錬金術の実験室にいるとしたら、
エメラルド・タブレットを学ぶ良い機会だったろう。
だが、おまえは砂漠にいる。
砂漠に浸かり切るがよい。
砂漠がおまえに世界を教えてくれるだろう。
本当は、地球上にあるものすべてが、教えてくれるのだ。
おまえは砂漠を理解する必要もない。
おまえがすべきことはただ一つ、
一粒の砂をじっと見つめることだけだ。
そうすれば、おまえはその中に、
創造のすばらしさをみるだろう」
「どのように、砂漠に浸かり切ればいいのですか?」
「お前の心に耳を傾けるのだ。
心はすべてを知っている。
それは大いなる魂から来て、
いつか、そこへ戻っていくものなのだからだ」
次回は「沈黙」について、
エメラルド・タブレットに書かれていることを抜粋したいと思います。